
アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所に行ったことは、この旅の中で、いや、今までの旅の中でも一番心揺すぶられた経験でした。
とはいえ、アウシュビッツに行く前日まで、長崎・広島をも訪れたこともない私が行くのは、おこがましいような気がして、行くか行かないか決めかねていたのです。
ワルシャワからクラクフに移動した二日目の朝、雨の音で目を覚まし、iPhoneで天気予報を見ると一日雨。それならばアウシュビッツへ今日行ってしまおうと駅に向かったのでした。
クラクフ本駅から列車でもバスでもアウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所のあるオシフィエンチムに行くことが出来ますが、バスはアウシュヴィッツ博物館の目の前で下車できるとガイドブックにあったのでバスを利用することにしました。

バスステーションの窓口で7:50発のチケットを買い、バスに乗り込み出発を待っていると、日本語が聞こえたのでそちらを見ると、お二人の日本人男性でした。
ポーランドに来てから数日、日本人はおろか中国人や韓国人も見かけていなかったので思わず声をかけると、某中東国に駐在している日本人商社マンお二人が休みを利用して旅行している最中で、これから向かうアウシュヴィッツでは唯一の日本人ガイド中谷氏のガイドを申し込んだとのことでした。
ちなみにバスでクラクフから1時間半ほど。終点ではないようですが、アウシュヴィッツ博物館につくと運転手さんが声をかけてくれました。

アウシュヴィッツとビルケナウの強制収容所(ふたつの収容所間には無料シャトルバスがある)を見学する際のシステムを説明すると、入場料は無料で、5月から10月の10:00~15:00の時間帯はガイドと一緒にでなければ入れませんが、10時前に入ればガイドをつけずに無料で見学できるわけです。
(アウシュヴィッツ博物館などの運営はほぼ寄付によってまかなわれているようです。入場料無料ってすごいです)
ガイドは英語・ドイツ語・ポーランド語などなどありますが、日本人公認ガイドは中谷さんという方おひとりだけで、メールなどで事前に予約となっていました。
ネットで情報収集したところ、この中谷さんのガイドは素晴らしかったと大絶賛されており、私も予約メールしようかどうか迷ったのですが、けっきょくしないままでした。
そのことをバスで出会った日本人のお二人に話すと、「当日でも大丈夫かも。電話してあげますよ」と言って下さったのでお言葉に甘えさせていただき、結果、当日突然参加が叶うこととなったのです!(ありがとうございます!)
ちなみにそのときの中谷さんのガイドの参加者は10数名ほど。お支払いしたガイド料はひとり40ズロチ(1200円位)。なんでも参加人数によって値段の変動があるそうですが、40ズロチならば英語ガイドと同じ値段です。

さて。
アウシュヴィッツで感じたことを伝えるのは難しいのだけど、アウシュヴィッツが「博物館」であることに、あらためて衝撃を受けました。
かつて強制収容所だったところがアウシュヴィッツ博物館となり保存されている…
あの場所は、人間の残酷さとその歴史を伝える場であると共に、お墓であり、追悼の場でもあるのだと実感したことは、自分の中でとても大きなことでした。
それから、多くの方がおっしゃるように、できたら中谷さんにガイドをお願いすることをおすすめします。
彼は物静かに悲惨な事実を淡々と語ります。
決して押しつけがましく語ったりしないのです。
むしろ、ご自分の言葉で、見学者の感情を操作をしないよう気をつけているよう感じました。
政治、宗教、差別意識、当時の状況など多方面からの視点で、何故このようなことが起こってしまったのかを、それぞれが考えるヒントとなるように解説してくださいます。
そして「加害者の多くは傍観者だった」という言葉もよく口にされ、それは私自信にも当てはまることだとズキンズキンしました。

いろいろな国から多くの方が訪れていました。
大きなイスラエルの旗を身体に巻きつけるようにして見学している学生たちの中には、立っているのがやっとというくらいの悲しみを(もしかしたら怒りのようなものもあったかもしれない)発している少女もいました。
アウシュヴィッツで見たものは悲惨なものばかりでしたが、中谷さんのガイドは最後に希望を感じさせるものでした。
ここを訪れる多くは、少年少女などの若い世代だと。多くの若い世代の人たちが、訪れ、感じることで、あの悲劇を繰り返さない世界になるよう期待していると・・・

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