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文盲 アゴタ・クリストフ自伝

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今週末から公開の映画・悪童日記の原作者であるアゴタ・クリストフの自伝的エッセイです。

1986年に刊行された「悪童日記」は、母国語であるハンガリー語ではなく、「一生、上手に使いこなすことはないであろう」とアガタ本人が言っている亡命先の言語のフランス語で書かれています。
ある意味たどたどしい文体が、双子たちが語るスタイルの物語に見事にはまり、それが魅力にもなっている作品です。

今回読んだタイトルの「文盲(もんもう)」とは、文字の読み書きができないことをいうのですが、作家であるアゴタ・クリストフは、1956年のハンガリー動乱で祖国を脱出しスイスのフランス語圏に亡命したことで、いわゆる「文盲」となったのですね(それも20才過ぎてから! さらには亡命から30年後、つまり50才代で悪童日記が出版されています)

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この本では、ハンガリーで育った幼い頃のことや、20代はじめに幼子を連れ命がけの亡命をしたことなどが淡々と綴られており、悪童物語三部作のもとともなっていると思われる箇所もあります。

亡命先で母国語が通じず、言葉をほとんど発することなく工場の仕事に追われ、どんどん言葉を覚え育っていく子供と、お互いの言葉が通じなくて泣いたというエピソードもありました。


幼い頃から読むこと、書くことが大好きだったアゴタが、母国と母国語を捨てなくてはならなかった運命。
そして、新たに第二の国の言葉を取得し執筆し、それがベストセラーになるという奇跡のような真実。

 
「わたしはフランス語もまた、敵語と呼ぶ。別の理由もある。
こちらの理由のほうが深刻だ。すなわち、この言語が、わたしの中の母語をじわじわと殺しつつあるという事実である」

というのは文中からの抜粋です。

なんとも哀しく冷静なアゴタ自らの分析であり、悪童物語三部作の空気感にも通じているように思えました。

この本は文字数にしたら短かく、あっという間に読めてしまうけど、内容は深いです。
また、訳者の堀 茂樹氏の解説(本文より長いかも)も非常に面白く読み応えがありました。

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さて。
自分と重ねるのは、大変おこがましいのですが、日本ではあたりまえのように出来ることが、言葉の通じない異国の地では、切符一枚買うことすら簡単ではない・・・簡単なはずのことが通じないことが続くと、かなりのストレスになります。
(マダム・イン・ニューヨークでも、その辺のこと共感しながら観てました)

もちろん、私の場合は短期間の旅行だし、過ぎてしまえば、いつの間にか旅の面白エピソードに加えられてしまうのですが、「イイオトナなのに、こんなことも伝えられない・・・」という思いは、けっこう強烈な体験です。

さてさて。今週末公開の映画「悪童日記」が楽しみです!

↑写真、「文盲」の左に写っているノートは、映画「悪童日記」の前売り券を買ったらオマケでついてきました。
「悪童日記」の原題はLe Grand Cahier=「大きな帳面」。
だからノートがオマケなんですね☆

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コメント

予告編観ました。
あー、胸が締め付けられえるようなシーンが沢山
ありそうです。
 本は自分の頭の中の想像の世界。
映像になると、リアルに脳裏に焼きつけられるような。
まず、本を読んでから観たい。と思いました。
紹介ありがとうございました。

投稿: kotokoto | 2014.09.30 09:51

kotokotoさん

本で感動した作品が映画化されるのは
とーっても楽しみですが、
がっかりするかもといった怖さもあります。
今回はどうかな?

投稿: whoko | 2014.09.30 13:44

おひさしぶりです!
whokoさんのブログから、
この映画のトレイラーに飛び、
「悪童日記」を衝動買いしてしまいました☆
キンドルなので、日本の母親に送ってもらわなくて
良いというのも大きかったですが。
これからゆっくり読もうと思います。
楽しみです!!
(昔読んだはずなのに、うろ覚え。。)

映画はいつ見れるかな?
本トレイラーを見て、ドキドキしまいました。

母国語じゃない言葉で、
小説を書くって、すごいことですよね。
私なんて、電子メールも、危ういのに。。。

投稿: puppy | 2014.10.05 01:04

puppyさん

ほぉ♪
悪童日記も電子書籍化されているのですねー!
私も読み返してから映画を観に行きました。
ほぼ原作に忠実に映像化されていました。
ふたごたちのイメージはぴったりだったし、
おばあちゃんの家の様子も想像していたものと
何ら違和感なかったです。
本を読まずに映画を観た方が、どんな理解をされるのか興味を持ちました。
そろそろ映画レヴューも増えてきた頃なので読みに行って来ようと思います

> 母国語じゃない言葉で、
> 小説を書くって、すごいことですよね。

はい。すごいことですよね。
たくさんの国の言葉に翻訳されているようですが、本当の母国語であるハンガーリー語版は、アゴタ本人が書いているのかしらね?

投稿: whoko | 2014.10.06 09:16

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